Vol.10 触れることで、視界がひらく

今日も、東京はピリッと引き締まる空気。
最近、お店にはベビーカーを押しながら立ち寄ってくださるお客様が増えています。


先日、ご来店のお客様とこんな会話がありました。
「ここは、どんな会社なんですか?」
製本会社であること、1938年創業であること、ワークショップの糊綴じノートや、ドローイングパッド、メモブロックを製造していることをお話ししました。
日記を書いているので、それを綴じてあとから見返したい—— そんな想いも伺い、糊綴じノートもご紹介しました。

お客様は一通り話を聞いたあと、
「じゃあ、この会社は紙を売るというより、技術を売りにしているんですね」と言われました。
その言葉が、とても新鮮でした。

考えてみれば、確かにそうなのかもしれません。ドローイングパッドも、メモブロックも、ITO BINDERYの商品はどれも技術が光るものばかり。シンプルだからこそ、ごまかしがきかず、噓偽りのない製品。一つ一つ手作業で製造していることは、今の時代には化石のように映るかもしれませんが、あらゆる点において「堅牢」という言葉がしっくりきます。


私たちは、日々紙を揃え、断裁し、折り、綴じ、包む。
その工程を繰り返し、あらゆる製品を製造しています。

言葉にしてしまえば、あまりにもシンプルな工程です。
例えば、紙を揃えるときの音。トントン。
私たちが揃えると、こんな音に聞こえてきます。
これが、職人の手にかかると、もっと鋭い、ドン。カッツ。

実際に手を動かしてみると、その技術力に思わず脱帽します。このように、シンプルな工程の中に研ぎ澄まされた職人技が息づき、製品は生まれていくのです。

だからこそ、ボタンを押して大量に製造する加工と、ITO BINDERYのものづくりは、相反しているようで、とても近しい。どちらも、技術があるからこそ製品として際立つ。時には、大量生産と職人技が融合して、個性あふれる商品が生まれています。


先ほどのお客様との会話の続き。
「この文房具も販売しているんですか?」「鉛筆も?」「購入したら、最初だけここで削ってもらえますか?」

簡易の鉛筆削りをお渡しし、切り離したドローイングパッドの紙の上で削ってもらいました。
「おお……」
紙を切り離したその瞬間の気持ちよさに、思わず声がこぼれます。

本来は、思いを書き込むための道具。
けれど、その前に、紙に触れ、切り離すという体験をしてもらえたことが、とてもよかったなと思いました。


紙に触れる機会は、減っているのかもしれません。
けれど、実際に触れてみると、その次の瞬間、目の前がパーッと開けるような感覚が訪れます。視界がひらけ、思考が動き出し、気づけば、次の何かを生み出したくなっている。
そう、実際に触れることは、次のステ-ジへの近道と感じています。

今年も、たくさん紙に触れてほしい。
そして、お店にご来店の際は、職人技を見て、感じて、五感をめいっぱい使って堪能してもらえたら嬉しいです。

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